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アンコちゃんの想い人はあの人だ。
「アンコ、オマエの好きなヤツってさ、モリノ特別上忍?」 アンコのカッーと染まった赤い顔が答えだった。 あの後、執務室でイルカは本当にいたたまれなかった。 三代目はイルカをからかい「イビキに惚れでもしたか?」人の悪い顔をした。 「‥‥カワイイ‥‥」モリノ特別上忍は顔を引き攣らせていた。 そして何故かカカシには激しく睨まれ続けた。片目しか見えないがあれは睨んでいる目だろう。暗いチャクラがカカシから流れ出している。怖い。 ‥‥もしかしてカカシ先生、モリノ特別上忍に惚れてるのか? 無気味な想像をしてしまうほどの迫力が確かにあった。そしてアンコの思わぬ恋敵出現にイルカは涙せずにはおられなかった。 「‥‥そうよ。イビキよ」 ああビンゴ。 不審者扱いされてまで知りえた答えは尊かった。 実のところ、イルカはモリノ特別上忍をアンコの片思い候補から完全に除外していた。 なんとモリノ特別上忍を勝手に四十歳程度と見積もり、さっさと片思い候補から除外していたのだ。それをうっかりアンコに漏らすと、 「まだ二十七よっ!」 いらぬ鉄拳制裁をアンコから受けてしまった。まったくの不覚。 調査に先入観を持つべからず、万が一の可能性も想定せよ。 諜報捜査のイロハをもう一度鍛え直す必要がありそうだ。腕が鈍ったか気が弛んだのか、我が身が憎いイルカだった。 「でもなんで分かったのよ」 アンコはまだ顔を赤らめたままイルカに尋ねた。 「まあな、俺は諜報出身の優秀な男だよ」自分で言って自分で傷付く。ちょっと自虐的。 ふ〜ん? とアンコは疑わしそうな視線をイルカに浴びせつつも、 「お節介、しないでよね」と釘をさした。 「んなこと分かってるよ」 なにせ、お節介したくても出来ないのだ。 イルカは今、モリノ特別上忍にとって不審人物リストの最有力候補。先程偶然すれ違った時も微妙な顔をされた。余り面識の無い人に、とんでもない印象を植え付けてしまった。 ‥‥三代目の冗談、間に受けてなきゃいいけど。 「アンコ、早いトコ上手くいってくれよ‥‥」 俺の為にもとイルカは願った。 end |